「承認(アクノリッジ)」とは何か
「承認する」とは、子供の存在自体を認めることです。
もちろん、子供は自分で自分自身の存在を知っていますが、信頼する他人(親)から存在や行動を認めてもらうことで、自分自身を再認識できるのです。
さらに、子供の存在や行動を「承認」することで、子供自身には見えていなかった自分を新たに発見するきっかけを与えてあげることができます。
残念ながら、世の中では人の存在を承認するアクノリッジが生活の中でほとんど行われていません。
学校でも塾でも友達関係でも、そこのその人が存在し、機能しているのが当たり前と思われがちで、自分の存在が承認されたと思える経験がない人達もたくさんいます。
さらに、家庭の中でも、忙しさや複雑になった生活のストレスなどから家族同士が存在を認め合うこと(承認)がなおざりにされやすい時代でもあります。
親自身も日々の生活の中で、「(人から)自分を認めてもらえない」とがっかりしたり、不満に思うこともあるのではないでしょうか?
小さな、もしくは若い子供だったら、なおさら生きていくのに「承認」が必要なのです。
そして、その「承認」にはその子供の人生を変える力があります。
「承認(アクノリッジ)」と褒めることの違い
「承認(アクノリッジ)」とは、子供の存在そのものを受け止めることです。
ですから、アクノリッジするために無理に子供を褒める必要はありません。
褒めることは「第三者からの評価」ですから、必ずしも子供がそれを聞いて喜ぶとは限りません。
一方、「承認(アクノリッジ)」は事実を述べるだけですから、使い方による誤解などもありません。
それでは子供を「承認」する方法を具体的に学習していきましょう。
挨拶をする
子供に挨拶をしましょう。
そんな簡単なこと?と思われるかもしれませんが、喧嘩をしてしまった次の朝に子供に「おはよう」と言うだけで子供の心はずっと軽くなり、安心して一日を始められます。
子供にきちんと挨拶することで「そこに居ることがちゃんとわかっているよ」「そこに居ることをうれしく思っているよ」と、その存在を認めることになっているのです。
挨拶をする時、子供の名前を呼ぶと、よりあなたからの「承認」が心に届くでしょう。
子供が居間に入ってきてもテレビや新聞から顔を上げず挨拶もしないとしたら、それは子供の存在を承認していることになりません。「無視」は「承認」の対局にあります。
観察して伝える
子供がいつもより早く帰宅したら、「あれ、今日は早いんだね」、遅くなったら「今日はいつもより遅いね」と観察したことを子供に伝えてあげましょう。
子供の外見の観察も大切な「アクノリッジ(承認)」のひとつです。
「髪を切ったらさっぱりしたね」「結構ショートが似合うね」「その洋服新しく買ったの?」など、子供を普段から観察して、それをあえて口にだして伝えてみましょう。
「あなたのことに関心を持っているよ」というメッセージを伝えられます。
良い成果を指摘する
良い成果や成長があった場合、それも口にだして承認してあげましょう。
「最近、部活がんばってるんだね」「今日は約束どおりにちゃんと早く帰れたね」と、良い事実をそのまま伝えます。
気持ちを伝えたいときはアイ(私)・メッセージを使います。
「(わたしは●●ちゃんが)約束通りに早く返って来てくれて安心したよ」
「(わたしは)●●君が手伝ってくれたからすごく助かっちゃた」
アイ(私)・メッセージで伝えられたメッセージは押し付けにならず、少し神経質な子供でも素直に「自分への承認」として受け止めてくれるでしょう。
注意点1:
良い結果を指摘して承認する場合、Youメッセージを使うと、「自分の存在ではなく結果だけが承認された」と勘違いされてしまうかもしれません。
例1:
親: 今回のテスト、(あなたはYou)よく出来たじゃない? (Youを主語にした承認)
子: (良い点数だけ取っていれば喜ぶんだ。では逆に悪い点を取ったら自分には親にとって価値がないのかな?)
例2:
親: 今回のテスト良い点数だったね。お母さん(お父さん)は●●君が頑張って勉強してたの見てたから良い結果が出て嬉しいよ。(「わたし」(I)を主語にした承認)
子: うん。(勉強していたことを見ていてくれた。結果も良い点数で良かったな)
注意点2:
結果を承認する時に他人と比較して承認しないようにしましょう。
コーチングは他人と比較してやる気を起こさせるスキルではありません。
他人と比較すれば、「わたし-I(親)」でも「あなた-You(子供)」でもなく、関係のない第三者を会話に持ち込むことになり、競争心を煽ったり、「自分は親に無条件に愛されていない」という印象を与える結果になります。
せっかく「承認しよう」「行動の結果をほめてあげよう」と思っても、逆効果になってしまうでしょう。
「ありがとう」と言う
子供に何かを手伝ってもらった時、「ありがとう」と言っていますか?忙しいので「ありがとう」は省略してしまったりませんか?
また、子供に「ありがとう」と言う必要はないとか、親がお礼を言ったりするのは恥ずかしい、親の権威にかかわると思ってしまう方もいます。
普段子供に「ありがとう」と言っていないと、「ありがとう」と言うことが最初はとても不自然に感じたり、恥ずかしかったりするかもしれません。しかし、何度か「ありがとう」と思い切って言ってみることで子供の反応がどれだけ違うか驚かれることでしょう。
何度か練習することで、簡単に「ありがとう」と言えるようになります。
「ありがとう」なんて簡単すぎて、と思わないでください。「ありがとう」という言葉は最大の「アクノリッジ(承認)」なのです。
子供に笑顔を見せる
これはボディランゲージで表せる「承認(アクノリッジ)」です。
子供が居間に現れた時、親がしかめっ面をして迎えれば「何か怒られることがあるのかも」「何かをやって親を不機嫌にさせたかも」と思われてしまいます。
たとえそうであったとしても、ちょっと笑顔を見せることだけで、子供は「承認されている」「愛されている」と感じ安心します。何か子供に注意しなければならないことがあっても、子供がその前に笑顔で承認されれば、安心感から素直に聞き入れてもらえるでしょう。
子供と一緒にアクティビティをする
子供のために時間を割くこと自体が子供への承認です。
たとえ興味がなくても、子供が楽しんでいるゲームや番組、音楽などを一緒に聞いてみましょう。
誰でも好きなことをしている時は気持ちがオープンになって打ち解けていますので、一緒に遊びながらの会話はコーチングに最適ですし、子供が何に興味を持っているのか、何を楽しんでいるのかを知る機会になります。
何かを任せる
あえて相手のために求めることも承認のひとつです。
「●●ちゃんは、お皿を丁寧に拭いてくれるから助かるよ。お皿を拭くのを任せてもいいかな?」などと、仕事を振ってみましょう。
承認されたあとに頼み事をされる場合、子供は、親に本当に認めてもらっているという実感を得ることができます。
相談する
少し大きくなった子供には、何かを相談するのも承認のひとつになります。
夕飯の内容など小さな相談から、家族旅行の相談をするのもひとつの方法ですし、親の職場での人間関係などの複雑な話題も内容がふさわしければ相談できます。
子供が意外な答えや提案を持っていたりして驚かれることでしょう。
こうして相談することで、子供への認識もかわっていき、その結果子供を承認することがどんどん容易に、楽しくなってくるはずです。
- 「承認する」とは子供の存在自体を認めること
- 「承認する」のに褒める必要はない
- 子供への挨拶、お礼、ほほ笑みなど簡単なことで承認できる
