Lesson5-3 「承認③ー得られる効果」

Lesson5-3では、チャイルドコーチングにおける「承認」で得られる効果をまとめとして考えていきます。

承認することの益

リフレーミングできるようになる

生活の中で子供その存在自体を「承認」するには、子供の話をよく聞いたり、子供の行動や表情をよく観察することが必要になります。

観察し、声掛けや表情などで「承認」を表すことを心がけると、子供の小さな感情や変化も目につくようになります。

「子供を承認すること」で、子供を見る目が変わってくるのです。

これを家族療法用語で「リフレーミング(reframing)」といいます。

「フレーム」とは英語で「額」や「枠組み」の意味ですが、re-framingとは、その額や枠を一度取り外し違う額や枠をかけてみることを表しています。つまり、物事を別の見方で理解してみるということです。

リフレーミング

「リフレーミング」をすることで、子供を観察することで視点をかえたり、短所だと思っていた部分を長所と考えられたり、ポジティブな方向から子供を捉えることができるようになるかもしれません。

「リフレーミング」を意識的にするため、子供を観察するときにはどんな言葉を使っているか考えてみてみましょう。

子供を見て「まただらしない格好をしている」と考えていることに気づいたとします。

これをポジティブな言葉で捉え直してみましょう。

ポジティブな言葉や思いやりの気持ちでリフレーミングしてみると、

「洋服もきちんと着られないくらい今日は疲れているのかな?何か心配事や気になることがあるのかな?」

「細かいことは全く気にしない子だ。その分おおらかでいい。」

などという言葉がでてきます。

子供を観察し「その様子や出来事に良い意味付けをするとしたら、どんなことが考えられるか」と、リフレーミングすることを練習してみてください。

そのうちに、子供の言動だけでなく、自分の言動にもポジティブなリフレーミングができるようになるはずです。

子供の変化や気持ちをキャッチできるようになる

「傾聴する」「共感する」だけでなく、積極的に「承認」行動をしていくと、話を聞いて頷いたりするだけではわからなかった子供の小さな気持ちの変化や隠れた興味などをキャッチできるようになります。

コーチングの本を読んで「聴く」「共感する」などを試しても、いまいち子供に変化がなかったり、効果的なコーチングをしているという実感がなかった方は、「承認」行動を続けていくことで、かならず手応えを得るようになるでしょう。

子供の変化やエネルギーをキャッチするようになると、子供の長所にもすぐに気づけるようになります。

「子供の長所を10個リストアップしましょう」などの課題で、すぐに長所をあげることができない方は多いかと思われますが、承認する練習をしていれば子供の長所をたくさんあげられるようになるでしょう。

ピグマリオン効果が得られる

ピグマリオン効果pygmalion effect)とは、教育心理学用語で、「教師や親の期待によって児童の成績などが向上する効果」です。

ピグマリオン効果は1964年にアメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって実験が行われました。

言葉の由来は、ギリシャ神話から由来するといわれています。

「ピグマリオン」という王様が女性の彫像を愛した結果、彫像はピグマリオンの愛に応えて人間化したという物語です。

ローゼンタールの実験では、同じ学力の子供が集められ、担当する教師に「このグループの子供達には(学力か才能があり)成績が伸びると予測されている、こちらのグループの子供達は成績が伸びない」と告げられます。(しかし、どの子供も同じ学力ですので、実際はどの子供も同じ成績を出す能力があります。)

すると、教師は「将来成績が伸びる」と断定された子供には期待を持って接するようになり、その結果、教師から期待をかけられた子供達は成績が向上したのです。

子供のよい部分を日々承認することで、子供は「親はちゃんと見ていてくれている。」「親に認められている」と感じ、その期待に添えるよう、良い部分を伸ばしてくれるでしょう。

そのような自分への建設的な自信は、生活態度の向上や、学習意欲へとつながります。

おだてる、褒めることから来る害から守られる

ピグマリオン効果は、時に「褒めたり、おだてたりして子供をその気にさせる」テクニックとして批判されることもあります。

子供を過度に褒め過ぎたりおだてたりすると、子供自身はほめてもらうことを当然と考えたり、逆に賞賛を受け入れられなくなったりする害があり、良い結果にはならないという考え方もあります。

さらに、「自分はできるのだから」と怠けてしまい、実力は伴わないけれど自信だけは肥大した自己愛が強い子供に育ってしまう危険性もあります。

これは子供にとっても非常に辛いことです。

しかし、チャイルドコーチングの「承認」行為は、褒めたりおだてたりする行為とは違います。

子供の存在自体、そしてその行動を認識して認める行為です。

「承認」を使えば、将来この褒め言葉が子供の害になるのでは?と心配する必要がありません。

  • 承認行動には大きな益がある
  • リフレーミングできるようになる
  • ピグマリオン効果が得られる