今日は、コーチング・リスニングの第三ステップ「共感しながら聞く」を学習します。
共感しながら聞く
「最後まで聞く」、「観察しながら聞く」ステップは受身のリスニングでしたが、「共感しながら聞く」リスニングは、親の側からアクションをしながら聞くテクニックです。より本格的なコーチング・スキルですので、ぜひがんばって学習していきましょう!
「共感する聞き方」ってどんなことをするの?
共感するとは、「他人と同じ感情をもつこと」「他人の意見や感情をその通りだと感じること」です。
もちろん、他人の話や子供の話を聞いていつも完全に「同意」できるわけではありません。むしろ、子育てにおいては子供の意見に同意できない場面のほうが多いでしょう。
ではそんな状況でどうやって「共感」しながら話を聞けるでしょうか?
それは話の「ストーリー」ではなく、話し手の「そのときの気持ち」に同意することによって「共感」しながら聞けるのです。
気持ちに共感できなくても「共感して聞く」方法
しかし、子供の気持ちに簡単に「共感」できない場合はどうしたらいいでしょうか。
例えば、子供がおもちゃ売り場でおもちゃをほしがる場合です。「おもちゃを買わずに帰りましょう」というあなたの言葉に対して、子供は「いやだ。欲しい。買ってくれるまで帰らない。」という場合、子供の気持ちには共感できないでしょう。
こんな時は、「どうして言うことを聞けないの?」と言ってしまう前に、一度、子供の会話の中の「気持ち」部分を機械的に繰り返してみてください。
例:
子供:「おもちゃが欲しい。買ってくれるまで帰らない。」
親:「おもちゃが欲しいんだね。」
子供:「うん。お友達がみんなこれを持ってるんだ。持ってないと一緒に遊んでもらえないんだ。」
この会話では、親が「おもちゃが欲しいんだね」と子供の気持ちに共感したことで、子供は、「うん。(そうなんだ。)」と、まず、自分の気持ちを肯定できました。
そして同時に、会話自体も「いやだ(NO)」から「うん。(YES)」と肯定会話に切り替わりました。
このことで、お互いの気持ちが肯定(ポジティブ)な方向に向いています。
また、自分の「気持ち」が肯定されたことで、子供はコミュニケーションの機会が開かれていることを感じます。それで、「みんなが持っていて、自分も持っていないと困るから」という本当の気持ちを明かしました。
続く会話でも子供の言葉を一部繰り返してみましょう。
親:「みんなが持ってるんだね」
子供:「うん。〇〇ちゃんも持ってるし、〇〇君も持ってる。今、すごく流行ってすごいんだよ。」
親:「すごいんだ」
子供「うん!これはね、〇〇というキャラクターでね、、、」
子供は自分の話が肯定されるたびに気持ちが明るくなっています。肯定的会話を繰り返すことで「買ってくれるまでは帰らない!」という頑な態度は消えていくでしょう。
おもちゃを買うか買わないかは、子供が望めば後日(または帰宅後)話し合うことを提案します。
この会話例では、お店の前で駄々をこねる子供に共感の態度を示すことで子供を落ち着かせることができました。
バックトラッキング(繰り返し)しながら聞く
このように、相手の話の一部を繰り返すことをコーチングでは「バックトラッキング(backtracking)」といいます。
バックトラッキングとは、もともとはコンピューター数学用語で、「一つ前に戻る」という意味の言葉です。
コーチングでは主にNLP(神経言語プログラミング)メソッドの中使われていて、他のコーチング流派では、「おうむ返し」、「ミラーリング」などと呼ばれているテクニックです。
コーチング流派によって違う名前で呼ばれていますが、会話を聞いている途中に相手の言葉を繰り返すテクニックは全てのコーチングで使われている重要なテクニックです。コーチング・リスニングを行っている時は、できる限りバックトラッキング(相手の言葉の繰り返し)を使ってみましょう。
しかし、バックトラッキングは繰り返すポイントを間違うと、かえって相手を怒らせてしまうこともある為、コーチングを始めた人が一番最初につまずくポイントといわれています。
でも心配はいりません。 バックトラッキング(繰り返し)をするときは以下の点に注意して繰り返してください。きっと子供の気持ちを掴むことができるでしょう。
1: 話し手(子供本人)の感情を表す部分を繰り返す
先程の例では、
子供:「おもちゃが欲しい。買ってくれるまで帰らない。」
親:「おもちゃが欲しいんだね。」
と、「欲求」という感情部分を繰り返しました。
コーチング・リスニングで一番大切なのは、「私は、あなたの話を聞いて共感していますよ」というメッセージです。ですから、話し手が「さほど重要でない部分」と思っているパートを繰り返してしまうとかえって逆効果になってしまいます。
しかし、感情を表す言葉を繰り返すことで確実に相手の気持ちを言い表せます。
それでは、感情でない部分を繰り返した場面例を見てみましょう。
子供:「おもちゃが欲しい。買ってくれるまで帰らない」
親: 「帰らないんだ」
子供: 「うん、帰らないよ!」
この会話では、子供のネガティブな行動だけを強調してしまい、会話は堂々巡りになってしまいました。
子供は「おもちゃが欲しい」という気持ち(そしてその理由)を訴えたかったのに、その気持ちは伝わらず「家に帰りたくない」ものと誤解されていると感じてがっかりします。
バックトラック(くり返し)する時は、話の一番大切な部分=感情をくり返すようにしましょう。
2:感情を表す言葉が会話に入っていない場合
「欲しい」「いやだ」「悲しい」「~したい」「~したくない」など、感情に関係する言葉を繰り返すことが効果的バックトラッキングですが、会話に感情を表す言葉が入っていない場合はどうすればいいのでしょうか?
その場合は、内容すべてを繰り返します。
子供:「お友達がみんなこれを持ってるんだ。持ってないと一緒に遊んでもらえないんだ。」
親:「みんな持ってるんだ。持ってないと遊んでもらえないんだ。」
子供:「うん。仲間はずれになっちゃう。」
親:「仲間はずれになっちゃうんだ。」
子供:「そうなんだよ。」
このように繰り返していくうち、子供は親が正しく話しを聞いてくれることに気づき、騒いだり、暴れてた場合でも落ち着いてくるでしょう。
子供にとって重要なことであれば会話は続きますから、会話ができる場所で話し合いを再開できます。
さほど重要でなければ、会話は途中で自然に途切れ、気持ちも同時に落ち着くでしょう。
-
- 共感リスニングでは、必ずしも子供の話全てに共感する必要はない
- 感情に関する言葉をくり返して「共感しながら聞いている」ことを表せる
