チャイルドコーチングのリスニングでは、言葉だけでなく、「非言語メッセージ」からもリスニングを行います。
言葉以外の表現で行われるコミュニケーションを、「非言語コミュニケーション (non-verbal communication)」といいます。
具体的には、視線、表情、体のしぐさ(ボディランゲージ)、声のトーンを指しています。
通常、人が会話を行う場合半分以上の情報は「言葉」ではなく、相手の表情や態度から受けるといわれています。
まだ言葉が発達していない子供の場合、会話において言葉以外の表現が使われる率がさらに高くなるでしょう。
言葉が意識的に発せられるのと対照的に、非言語コミュニケーションは無意識に発生します。
ですから、子供の深い気持ちを知る手がかりとして、非言語メッセージが言葉よりも有益な手がかりになる場合もあります。
チャイルドコーチングでは主に会話を使いますが、子供がまだ上手に言葉使えない場合もありますので、非言語類を使って発信されている情報も上手に聞いてあげるようにしましょう。
また、非言語メッセージを聞き取れるようになると、自分の気持ちを率直に言えず相手が喜びそうな答えをしてしまうタイプの子供との対話や、心と言葉が一致していない矛盾したメッセージからも子供の真意を聞き取りやすくなります。
非言語サインとはこんなサイン
それでは、一般的に知られている非言語コミュニケーションの種類とその意味を調べてみましょう。
非言語サインには主に5つの種類があります。
1)ボディランゲージ
2)視線
3)言葉のトーンと周辺言語
4)沈黙
5)相手とのスペース(体の距離)
※下記に紹介する例は一般的に知られている非言語サインです。必ずしも全てのサインが気持ちを特定できる物ではないので、話し合いのひとつの手がかりとして参考にしてください。
1)ボディランゲージ
「ボディランゲージ」は日本語で「身体言語」または「身振り言語」と言います。
その名のとおり、身振りで表現されるメッセージで、話し手本人が気づいていない本当の気持ちを表したり、言語不足の際に言葉を補うものとして使われてきました。
また、古代、言葉が発達していない時代に言語の代わりとして使われていたのがボディランゲージです。
子供が話しながら腕を組んでいる
腕を組んだり、腕を閉じたりするポーズは子供が心を開いていないジェスチャーです。起こった出来事に憤慨し、それにまだ気を取られているのかもしれません。子供が腕を組んだ状態で話をしている時は、結論を急がず話を続けさせることで気持ちを落ち着かせてあげましょう。
袖口や手首周辺を触る
このような時は、興奮または動揺を鎮めようとしています。落ち着きなく見えますが、話し手はコミュニケーションを冷静にしようと努力している過程にいます。
首をかく
感情や体が疲れていたり、気持ちが限界に来ている時の仕草です。このようなジェスチャーが繰り返し見られる場合、子供は話し合いをするのではなく、話し合いを避けたいと思っているかもしれません。話を続けても改善されない場合話し合いを一旦中止し、まず休ませてあげるのがよいかもしれません。
顔を触る
話し手が自分の感情を隠したい時によく見られる仕草です。まだ感情を表す準備ができていないかもしれませんから、尋問のような質問は避けて話を聞くだけにとどめてみましょう。
指をいじる
退屈のしるしです。子供は会話に飽きてしまったか、話すべき事がうまく見つからないのかもしれません。このような身振りを繰り返している時は、「その時はどう思ったの?」「なぜそう思ったの?」等、会話を続けられる誘い水的な質問をしてみましょう。
腕が動く
これはリラックスしているサインです。腕を上げたり、腕を大げさに使った身振りをくわえて話している時、子供は楽しくポジティブな気持ちでいます。また、腕を大きく使う事で思考のプロセスを早めている証拠です。あなたに話したい事がたくさんあるに違いありません。
このような状態の時は子供の気持ちがオープンになっていますので、質問や提案なども自然に受け入れられるでしょう。
逆に腕がだらんと下がっている場合は、気落ちしているサインと言われています。「そんな事ないよ」「すごいと思うよ」など、自信をつけさせてあげる相槌が必要かもしれません。
2)視線
親の目を見ない
これは感情を見せたくない時のジェスチャーです。一般的には「隠し事をしている」時のジェスチャーとはいわれていますが、心配する必要はありません。親が聞いたら「なんだ、そんな小さな事?」と思えることも、子供には重大な問題であるものです。無理に聞き出したり、親の目を見るよう強制したりせず、そのまま話を続けるよう促しましょう。
また、子供がアイコンタクトを返してこない場合、子供は自分の話している事や感情に自信がないのかもしれません。「話を聞いてるよ」「よく説明できてると思うよ」等と、温かい言葉で励ましてあげましょう。
目をこする
心理学では目をこするジェスチャーは「何か見たくない物(感情)がある」サインです。話し手本人も目を向けたくない話題なのかもしれません。このような葛藤の仕草が見られたら、結論や目標設定のステージにはまだ到達していないかもしれませんから、ゆっくり時間を取って気持ちを吐露するよう促してみましょう。
しきりに斜め上を見る
これは脳が何かを思い出そうとしている時に起こる身体現象です。子供は話の途中で何が起こったかを思い出そうとしたり、その時の感情を思い出そうとしています。
このような時は、子供の話が途切れても口を挟まずに出てくる言葉を待ってあげましょう。
まばたきが多い
まばたきが多い場合は話し手は緊張してると思われます。子供の話をついつい怖い顔で聞いていませんか?
聞き手(親)も非言語を使って相手にメッセージを送っています。笑顔で聞けない場合は眉間のしわを作らないよう、少しびっくりしたような顔を作ってみると堅い表情がリラックスします。
3)言葉のトーンと周辺言語
「周辺言語」とは、人間の発する「言葉以外の音」の事です。ため息やうなり声、感嘆、泣き声などが周辺言語にあたります。周辺言語(ため息や、「う~ん」等)がよく挟まれますか?
話されている時の声のトーンはどうでしょうか?
話されている声が怒ったような大声か、それとも聞き取れないような低く小さな声かでその時の子供の感情がよく分かります。
大きな声を出す場合は、子供は自分を防御しようとしています。そのような場合は、「うん」「分かった」などの簡単な相槌をし、子供を責めるために会話をしているのではないというメッセージを送りましょう。
大きな声の根底にあるものは「恐怖」や「不安」ですから、「大きな声を出さないで!」と叱ってしまうのは逆効果です。
低く小さな声で話される場合、子供は話している事に確信がないのかもしれません。
その場合は、「そうなんだ」、「へえ!」などの相槌で確信を持てるよう励ましてあげましょう。
4)沈黙
沈黙には3つの意味合いがあります。
1つは思案中の沈黙です。話すべき言葉を捜している時、何かを思い出そうとしている時しばしば沈黙が生じるでしょう。
2つ目は休止の沈黙です。自分の感情と向き合ったり、鎮めたりするのに間が必要な事があります。また、話疲れて休みたい場合もあるでしょう。
3つ目は拒絶の沈黙。それ以上話したくない、または聞き手に抗議するための沈黙です。
3つ目の沈黙である場合、「また別の日に話そうか?」等と一旦会話を休止してもいいでしょう。
5)相手とのスペース(体の距離)
話をしている子供はどんな距離を取っているでしょうか?
あなたから遠く離れたところに座ったり移動したりする場合は心がクローズ状態です。「話したら怒られるかもしれない」という恐怖があるかもしれません。無理に近づいたり近くに座らせたりせず、その状態で話すよう促しましょう。
また、近くに座っていても、子供の体の向きがあなたからそれている場合、やはり子供はクローズ状態であるとメッセージを発しています。
このような時はすぐにポジティブな反応を期待せず、話をしながら心がこちらに向いてくるのを待ってあげてください。

