Lesson6-8「行動させる⑧ー継続させる」

前回の章では子供が目標を設定し、実行に移す一連の流れを学習しました。

今日は、その行動を「継続させる」方法を学習しましょう。

褒美システムとドーパミン

チャイルドコーチングでの褒美システムとは、勉強をしたり、お手伝いをしたりしたらお小遣いなどの褒美を与えるシステムではありません。

なぜなら勉強や家庭で家族に協力することは、子供の為であり、また当然の責任であるため、その行為に金品を与えることはよい結果にならないからです。

また、金品は、子供が少し大きくなり自分でアルバイトなどで金銭を得られるようになれば、褒美として作用しなくなってしまいます。

子供の好ましい行動を習慣づけるためには金銭や物でない褒美システムが望ましいのです。

それでは、ここではドーパミンという神経伝達物質を利用してみましょう。

ドーパミンという神経伝達物質は「報酬(何か好ましいもの)を得られそうだな」と思うと放出される物質で、ドーパミンが放出されれば、人間はわくわくします。

その点ではドーパミンは「人間を行動させるのに必要な物質」といえます。

実は、スマートフォンの過度な利用や買い物依存症は、「スマートフォンを見たら、なにかわくわくするものがあるのでは?」「これを買ったら幸せな気持ちになれるのでは?」というドーパミンの作用であると言われています。

どうしてもスマートフォンを見ずにはいられなくなったり、欲しいものが頭から離れないという経験は大人にもあるのではないでしょうか?そんな時は「これがドーパミンの作用だな」と、その強い衝動を感じてみましょう。

ドーパミンの作用には「ドーパミンは実際に報酬を得た時だけではなく、報酬を考えている時にもでる」という特徴があります。

ですから、良い気分になるのに実際に物を手に入れる必要はないのです。

この作用を利用して、「今日の宿題を終わらせたらゲームをする」「お手伝いをしたら公園に行く」など、好きなこととやらなければいけないことをセットにしてみましょう。

報酬は子供に考えさせてあげ、親が調整してあげましょう。

このドーパミン報酬セット作戦は大人にも多いに効果があります。

「苦手な営業を終えたらコーヒー・ブレイクに行こう」「帰省を終えたら自分の時間を持つために友達に会う約束をしておく」など色々なドーパミン報酬セットを考えられますね。

6-8

目標や達成項目を可視化する

「可視化」とは、見えない事柄をグラフや表、文字にして目に見える状態にすることで、「見える化」などとも言われます。

時間が経てば目標自体を忘れてしまうので、文字にして机や玄関など、毎日必ず目にする場所に貼っておくことは効果的です。

また、目標のための努力も目に見えづらいものです。

こちらも、「本日の学習量」などをグラフやカレンダーに書き込み、達成できたら塗りつぶしたり、シールを貼って成果が見えるようにすることで、やる気にもつながります。

表やカレンダーに記していくことで、今週は良くできた。先週は一日しかできてない、など今までの進み具合を具体的にできます。

一般的に、タブレットやパソコンなどの電子的なものよりも、紙媒体に記録するほうが効果を実感でき、成果にも繋がるといわれています。

この方法は、ビジネスの世界でも行われており、確実に成果を上げている方法ですので、チャイルドコーチングでもぜひ利用しましょう。

継続できない場合は抵抗を探す

フォローアップしても目標が継続できない場合は、達成や努力のための「抵抗」がないかどうか調べてみましょう。

目標設置や努力の継続という変化自体に子供本人の抵抗があるかもしれません。

そのような抵抗は通常起こるものですので、もう一度子供に達成しやすい目標設定(目標をさらに小さく砕くなど)をし、トライしてみましょう。

できないことへの抵抗があれば、目標をいったん停止し、より優しい目標(例えば復習など)の設定をしましょう。

できないことが、「失敗」ではありませんし、努力を続けるために、子供本人もそれを理解する必要があります。

チャイルドコーチングのスキルの1つである、「できないならば、どうやったらできるようになるか」というテーマで話し合ってみましょう。

それでは、継続できない「抵抗」の例を具体的に考えてみましょう。

以前にやったことがないので習慣づくまで時間がかかっている

何かが習慣づくまでは大人でも何度も挫折や中断を経験します。子供ならなおさらですので、心配することはありません。

計画が中断されたことは批判せず、もう一度計画を立て直し何度でも挑戦しましょう。何度挑戦しても構わないよとサポートしてあげることは子供にとって大きな精神的助けになります。

自信の欠如(一度つまづくと投げ出したくなる)

今まで挑戦が少なかった子供、またはまだ年齢が若い子供は挫折に対して免疫力がありません。

もしくは、なにか失敗したり、わからなかったりすることは「人間的にいけないこと」と思いこんでいるかもしれません。

何度もやり直したり、挑戦したりすることがその思い込みを一掃するよい機会になりますから、何度も挑戦することを励ましましょう。

知識不足(どのように継続するのかわからない)

目標に具体性が欠けているのかもしれません。

子供に課題を与えたり、言葉で励ますだけでなく、お手伝いなら一緒にやってみる、勉強なら最初に解き方を見せてあげるなど、具体的なサポートを与えてみましょう。

短期思考(すぐに結果がでないのでやる気を失う)

現代の世の中は「なんでもすぐに(そして簡単に)結果が得られる」と宣伝されていることが多いため、子供たちもその風潮に影響されているかもしれません。

コマーシャルや周りからの印象から「なんでもすぐに結果がでる」と信じ込んでいることもあるでしょう。

しかし、現実社会では、一歩一歩ゆっくりしか成長できないものです。「時間がかかってもいいんだよ」と時間をかけて実感させてあげましょう。

一方で、目標をさらに小さくわけ、比較的簡単に達成感がでるように工夫することもできます。

他への興味(他に気になることがある、悩みがあるなど)

子供の気が散っているようだったら、新たにチャイルドコーチング会話をし、興味や問題、悩みがあれば言葉にするよう励ましましょう。

レッスンの復習になりますが、話を聞いてもらうだけ、言葉にするだけで多くの問題は解決します。少し時間を割くだけで、また目標に集中できるようになるかもしれません。

実生活の中では、他に気を散らす問題や悩みがない中、目標だけに集中できる環境のほうがまれです。社会では問題などを抱えつつ、同時に目標に集中するスキルが絶対的に必要になりますので、良い訓練になるでしょう。

友達からの影響(遊びに誘われるなど)

許容範囲内であれば、ドーパミン報酬効果として利用もできます。「次回のテストが終わったら友達と遊びにいく」など、子供と一緒に”報酬”を設定してみましょう。

もし、友達からの誘惑や影響がとても大きければ、より大きな目標について話合うこともできます。

「将来はどんな職業につきたい?」「どんな生活をするのが理想?」

こんな質問で、目先のおつき合いから、将来のより大きな目標に目を向けるようにサポートできます。

  • ドーパミン効果を利用して報酬を設定してみよう
  • やっていることを可視化しよう
  • 「抵抗」は何か探してみよう