前回の章では、目標設定の際のガイドラインとなる「S・M・A・R・T」式を学習しました。
この章では、どのように具体的に目標を設定できるかを学んでいきましょう。
チャイルドコーチングは、子供が自分で考え、自分で解決策や目標を見つけ出すのを助ける教育法です。
ですから、目標設定においても子供が主導権をもって設定します。自分で設定した目標は人が設定した目標よりも達成しやすくなるからです。
チャイルドコーチングでは、親は子供の目標設定をサポートする役割があります。
それでは子供が目標設定をする具体的な流れを考えてみましょう。
現状を把握する
目標の設定や問題の解決策を得るためには、まず最初に現状を把握する必要があります。
そして、子供の現在の気持ちや現状は会話の中でチャイルドコーチングを適用することでスムーズに知ることができます。
コーチングの会話で、子供が正直な気持ちや現状を話しても、聞き手(親)から批判されたり追求されたりしないと安心できれば、正直な現状を聞くことができるでしょう。
親に何か話せば、「すぐに叱られる、批判されると」思っている子供は、現状を隠したり言い繕ったりしますから、なかなかスタートラインにつくことができません。
子供の問題や現状がしっかり把握できていない時は、焦らずステップ1-聴くからコーチングの会話を繰り返してみましょう。
目標案や解決策をブレインストーミングする
「ブレインストーミング(Brainstorming)」とはアレックス・F・オズボーンによって1940年代考案された会議方式です。
「ブレインストーミング」とは、たくさんのアイディアや考えを短時間の内に出しあうテクニックで、本人や話し合いに参加している人たちは、そのアイディアを批判したり否定したりしてはいけないことになっています。
アイディアが批判されたり否定されない状況では、理性でブロックがかかっている場合と比べ、物事を違った方向から考えたり発想を豊かにできる傾向があります。
そのため、斬新的なアイディアや、思ってもみない案が出やすいのです。
コーチングで目標を設定する時や問題の解決策を考える時、ブレインストーミングを利用してみましょう。
ブレインストーミングは、いわば「考えの棚卸し」作業です。
あまり深く考えずに思った目標や解決策を口にしてみるよう子供を励ましてみましょう。もちろん、ブレインストーミングを行っている最中はアイディア自体の結果や批判を一切行わないのがルールです。
子供が案を出している間、親は批判したり、説明を求めたり否定したりしないようにしてください。
親が子供の出す解決案や目標を箇条書きにして書き出してあげるとブレインストーミングがスムーズにすすむでしょう。
一度のブレインストーミングで良い案がでなくともかまいません。問題やテーマについて考える時間が長ければ長いほど、ブレインストーミングにおいて出る案も多くなります。
思い込みを外す
ブレインストーミングで出た目標や解決策を箇条書きにしてみましょう。
その中で、子供本人や親が「~であるべき」「こうしなければならない」と思い込んでいる型にはまった目標や解決策があるでしょうか?
もし、「~しなければならないから」「義務だから」「みんながやっているから」などの目標や解決策があれば、その時点でリストから外します。
子供自身が「わくわくする」「目標や解決策をみてやる気になれる」項目を探してみましょう。
目標や解決策を読んでみて、本人の気持ちが明るくなるか、ならないかが判断のポイントです。
座って計算しよう
本人がわくわくできるような目標や解決策が設定された時、本人はとても興奮しているはずです。
やる気はありますが、実行に移すには具体的に、数値で表し、期限を設定する必要があります。また、本人にやる気があっても、現実的でない場合、途中で計画変更も必要になってくるでしょう。
その目標を何月何日までに達成するには、毎日、●●をどれだけすればいいのかを、本人と一緒に計算しましょう。
本人にとって印象付けとなるので、計算は本人がするのがよいでしょう。
決意や目標設置と実行の間にはギャップがある
チャイルドコーチングを行い、本人が解決策や目標を見つけ出し、具体的に計画もしました。
これまでの一連の流れはとてもエキサイティングな体験に違いありません。
しかし、話し合いや計画と、実行の間には大きなギャップがあります。
話し合いや計画は頭の中だけで行われますが、行動に移すには現実という大きな一線を超えることが必要だからです。
ですから、最初の一歩は親のサポートが必要です。
「それでは今日は何からやる?」
「いつまでにやってみる?」
「さあ、今日からやってみようか」
「今日の分を終えたら教えてね」
などの具体的指針を与えてあげましょう。
大人でも、長年実行にまでうつせていない目標があるはずですが、一緒に行ってくれる人がいれば達成しやすいと思ったことがあるでしょう。
子供の場合、なおさら一人で行動するのは難しいですから、最初のうちはとくに具体的なサポートが必要です。
子供の年齢が低い場合は、お稽古ごとの練習や宿題を行う際、親が隣に座っていてあげるサポートが必要になるかもしれません。
あるプロのピアニストは、練習を続ける秘訣として、「子供のころにピアノの練習を続けるのが難しかったが、親が横に座ってくれたときは練習できた」と述べました。
そして、現実に行動に起こせば、現実の世界では何かしらのリアクション(反動や結果)が起こります。それは目標の達成というよい結果だけではなく、挫折や失敗、難しさや困難といったリアクションもあります。
その都度、子供に励ましや、目標の思い起こしが必要ならば惜しみなくサポートしてあげてください。
困難や挫折を経て目標が少しで達成されるようになると、子供は自分でそれらの問題を解決していくようになります。
目標は変わるもの
一度掲げた目標は、絶対に達成しなければならないわけではありません。
目標や決意、興味などは時間や環境によって日々変化します。
子供の状態によって、目標変更や方向転換は細かく行うことが理想的です。
チャイルドコーチングは目標設定や解決策が提案されたら終わりではありません。定期的に行ってはじめて効果がでます。定期的に、「今のあなたは目標についてどう感じている?」と話し合ってみましょう。
- ブレインストーミング方式で案を引き出そう
- 気持ちがあかるくなる目標を採用しよう
- 「実行」の第一歩は親のサポートが必要


