Lesson5-6 「承認⑥ー発達段階(敏感期)」

 

「敏感期」とは?

「敏感期」とは、オランダの植物学者であるユーゴー・ド・フリース(Hugo de Vries 1848-1935) が、「植物はそれぞれの成長過程で成長に必要なものを自ら取り入れる」ことを観察し、その一定の成長期間を「敏感期」と名付けたものです。

のちに、イタリアの医学博士で幼児教育者のマリア・モンテッソーリ(Maria Montessori 1870-1952)が、この成長時期段階は人間の幼児にもあてはまると考えました。

モンテッソーリによると、子供は幼児期にある能力を習得するために特定のものに突然強い興味を示すようになります。

能力の習得が終了すると、その興味は消え、次の能力習得のために全く別のことに強い興味を示すようになります。

 

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成長期(敏感期)のサイクル

強い興味→興味による能力習得→興味の減退→次の対象への興味→能力習得→興味の減退

このようなサイクルを繰り返しつつ、幼児が能力を習得していく時期が「敏感期」です。

 

モンテッソーリによると、そのような時期にある子どもは能力の習得に集中していますので、集中させてあげることが大切です。

子供が急にあることに固執したり、逆に、物事を急に投げ出しても心配したりイライラしたりせず、一生に一度の成長に必要な敏感期であると見守ってあげましょう。各敏感期において、子供が十分飽きるまでその時期の興味を探求、経験することが次の成長段階にステップアップするのに必要だからです。

それでは各成長時期にどのような傾向が見られるのか学習してみましょう。

 

話言葉・文字への敏感期

言葉や文字に感心を示す時期です。言葉の敏感期は、生後7ヶ月程度から3歳程度まで、文字への敏感期は3歳から6歳くらいまでに起こると考えられています。

親の口元を見て、言葉を発しようとしたり、すこし大きくなると「もう一度同じ言葉を言って」「その言葉じゃなくて、他の言葉にして」など、言葉に対する強いこだわりや執着が見られるかもしれません。

文字が書けない時期から、文字のような模様をひたすら書き続けたりするのは文字敏感期の1つの特徴です。

大人には理解できない欲求を続けたり、わけのわからない模様ばかりを書き続けて大丈夫なのかな?と心配する必要はありません。

 

運動の敏感期

同じ運動行為を何度も繰り返す時期です。1歳頃から運動敏感期が始まるといわれています。物を掴んで離す、ステップを登って降りるなど、同じような行動を何時間でも続けていられる時期です。

子供は運動敏感期を通して、体の基本的な動きのコツを掴もうとしています。

基本的動きへの敏感期は1歳から3歳、ボールを使うなどのより洗練された運動への強い興味は3歳から6歳くらいに現れます。

親と同じ行為を真似たくて何にでも手をだす時期でもあり、それが単なる「いたずら」だと誤解される子供もいますが、運動への敏感期だと知っていれば子供に安全なやり方を見せてあげるなどして、敏感期を促進させてあげることができます。

 

小さい物への敏感期

小さい物への敏感期は、虫、小石、小さな糸くずなどのゴミのようなものを集めたり触ったりすることから始まります。大人からみると、汚いもの、つまらないものに見えるかもしれませんが、子供にとっては手にとって近くで観察したり、所有したりする大切な感覚を培っている時です。

この敏感期がすぎれば大切にしていた小石などへの興味は急激に薄れます。

 

秩序の敏感期

やり方にこだわる敏感期で、3歳程度から現れるといわれています。

同じ道順、同じ順番などに過度にこだわり、本人意外にはこだわりの秩序が見えづらい為、概して「わがままな子供」「我が強い」「頑固」「融通が効かない」「変わっている」などと誤解されてしまうこともある時期です。

秩序の敏感期が始まると、子供にとっては生活全てが「秩序の対象」になります。

そのため、今までスムーズにできていた日常的なことが「個々の子供独自の秩序へのこだわり」からそのまま続けられなくなり、大人を困らせてしまう時期ですが、他の敏感期と同じく敏感期はあくまで一時的なものですから、「今、この子は成長している」と思って時間の許す限り秩序感を追求させてあげましょう。

 

数の敏感期

数に敏感期になる時期で、4歳から5歳ほどの年齢に訪れる敏感期です。

いつまでも、何度も数を数えたり、大きな数にも興味を示しだします。数字に興味を示さない子供の場合、数の敏感期を待って数字などを教えるのも1つの方法です。

物を並べたり、分けたり、比べたりする行為も多くなります。

 

敏感期に親にできること

敏感期はもともと「植物に備わっている自ら成長する力や能力が現れる時期」です。

各敏感期に子供の頭の中で起こっていることは、本人にしか理解できないことかもしれません。

親は、その時期に子供が興味を示しているものをもって提示してあげることで、敏感期を助けてあげられるでしょう。

例えば、数に興味を示す数の敏感期には、数字に関するおもちゃ(積み木やカードなど)を与えてあげたり一緒に遊んであげるよ良いでしょう。

なんでも触りたい運動の敏感期初期にいる子供には、触っても安全なボタンやスイッチがついているおもちゃなどが最適です。

敏感期には子供なりのこだわりが一定期間続くので、時間通りに行動するのが難しくなるかもしれません。

幼稚園に行く時間なのに、今興味を持っていることを切り上げることができない場合、親のスケジュールという都合もありますが、「今、成長に一番必要なこと」と考えてあげることも時に必要です。

 

  • 敏感期とはもともと植物に備わっている自ら成長するのに必要な時期のこと
  • M・モンテッソーリが幼児にも敏感期があることを観察した
  • 敏感期は特定能力習得が完了すると次の敏感期に移行する