今日のレッスンでは先回に続き、人間の行動傾向を理解する上で利用できるもう一つのカテゴリー分け「ソーシャルスタイル」を学んでいきましょう。
「ソーシャルスタイル Social Style 」理論とは、1968年に産業心理学者のディビット・メリルとロジャー・リードによって開発された行動傾向チャートで、ビジネスシーンでの円滑なコミュニケーションをはかるために利用されています。
ソーシャルスタイル理論では、行動心理学にもとづいて人が習慣的にとる行動の傾向を4つのカテゴリーに分けて説明しています。
もちろん、先回レッスンの「優位感覚」と同じく、無理に子供をカテゴリーに当てはめる必要はありません。
あくまでも「自分と違う性格の人間を理解する助け」として利用しましょう。
ソーシャルスタイル理論概要
ソーシャルスタイル理論によると、人の行動傾向には「自己主張度合い」と「感情表現度合い」の2つの度合いがあります。
「自己主張度」では、自分の意見を通す傾向にあるのか、それとも周りの意見を優先するかのどちらかのタイプにわけられます。
さらに、「感情表現度」では、感情を表に出しやすいタイプなのか、感情を内に抑えるタイプなのかでカテゴリーが分かれます。
これら4つを組み合わせることで下記4つのソーシャルスタイルが生まれます。
アナリティカル(Analytical) 理論型
「アナリティカル(Analytical-理論)」型は、一般に粘り強く、慎重で理論を優先します。おとなしく、気難しく見えるかもしれません。
感情表現の度合いは「感情を抑えて表に出さないタイプ」です。あまり話さず、何を考えているかよくわからない子供の場合、アナリティカル(理論)型ソーシャルスタイルなのかもしれません。一人で良く考え、じっくり時間をかけて結論を構築するタイプでしょう。
このような子供の場合、コーチングの際も応答を急かしたりせずに、充分に分析する時間を与えてあげましょう。また、話し合いが進まなくても、子供が考えていないわけではありません。すぐに応答がなくても安心しましょう。
あまり話し合いに慣れていない場合は、Yes No だけを答えさせるクローズド・クエスチョンを使った質問でコーチングのスピードを調整することもできます。
ドライビング(Driving) 行動型
「ドライビング(Driving)」型は行動型で主導権を握りたがるタイプです。
競争心や独立心が強く、行動派です。成果や成績にこだわり、他人と比べたがる傾向もあります。
ですが感情表現の度合いが低く、感情を読み取れないまま淡々と行動している様から、少し攻撃的に思えることもあるでしょう。そのためコーチングをしていても話し合いの主導権をとられがちです。
このようなタイプの子供には話をさせて上げることが大切です。 また、単刀直入な質問やアドバイスが合っています。
人の話を聞かない短所もありますので、必要なコーチング質問などは粘り強く繰り返し提示してあげる必要があるかもしれません。
エミアブル(Amiable) 友好型
「エミアブル(Amiable)」とは、英語で「親切、穏やか、感じが良い」という意味ですが、周囲の気持ちを優先させるタイプです。世話好きで、個人プレーよりもたくさんの人間と関わる活動が好きなタイプです。
感情表現度合いは、相手に合わせて友好的になったり静かになったりしますが、本人の本当の感情は外に出さない傾向があります。
このタイプは相手を慮って協力的ですので、最もコーチングしやすいタイプでしょう。
しかし、周囲を気づかうあまり、相手(親)の喜びそうな反応や答えだけを言いがちです。
ですからコーチングでは、模範的な答えが返って来たとしても「本当の気持ち」を引き出すためにさらに質問をしたり時間をかけたり、承認したりして掘り下げる必要性があります。
エクスプレッシブ(Expressive) 直感型
表現豊かで、主張が強いタイプです。熱中しやすく冷めやすい直感的なところがあるでしょう。周囲から認められているかどうかに強い関心があり、表面的に分かりやすいタイプです。
感情度表現度は高く、思っていることがすぐに顔や態度に現れます。
せっかちで行動も決定も早い傾向にありますので、コーチングでは本人がすぐに解決や結論に結びつけたがるかもしれません。
色々な見方があることを質問などで示唆してあげ、本人が通常たどり着かない深淵な思考に導いてあげる必要があります。
また、思いつきで話すこともあり話が脱線しすぎる場合は、質問を利用して論点に戻してあげましょう。
まとめ
カテゴリー分けすることで子供の傾向が全て分かるわけではありませんが、カテゴリー分けしてみることである程度子供に合ったコーチングアプローチができます。
優位感覚で学習したように、いくつかのカテゴリーにまたがっている性格もあるので、判断するのが難しいこともあるでしょう。しかし、相手(子供)のルールはどんなルールなのかな?と考えることが、子供個人への理解への第一歩になります。
わからなければ直接「●●ちゃんは分析型なんだね」と子供と会話をしてみましょう。
子供からは「そうなんだよね」とか「そんなことないよ!」など様々な反応があるでしょう。
そこから興味深い会話が始まるはずです。
- 産業心理学から生まれたソーシャルスタイル行動傾向を考えよう
- ソーシャルスタイルにはアナリティカル(理論型)、ドライビング(行動型)、エミアブル(友好型)、エクスプレッシブ(直感型)がある