ここまでのLesson4ではコーチングでの「質問」スキルを学習してきました。
ここまでの質問スキルを試されてみて、「チャイルドコーチング質問って難しいな」と感じられた方も多いのではないでしょうか?
コーチングにおいて、的確な「質問」はコーチングの要(かなめ)になります。そして適切な質問をするにはコーチ側の技量が求められます。
プロのコーチでも、的確な質問を相手の心に響く仕方でできるようになるまで長い経験が必要になる分野なのですから、難しいと感じることは自然なことです。
ですから、子供の気持ちを動かすような質問をするのは難しいと思っても焦る必要は全くありません。
大人を相手とするコーチングとは違い、チャイルドコーチングは親子の信頼関係や親密な時間がたくさんあるのですから、急がず、失敗にがっかりせず、会話の中で何度も質問の練習を続けてみましょう。
それではチャイルドコーチングの質問をする際、起こりがちなトラブルを具体的に考えてみましょう。
質問をする時、起こりうるトラブル
尋問質問になってしまう
子供を気遣ってして質問したつもりが、逆に子供を怒らせたり不機嫌にさせてしまうことがある場合、質問が尋問質問になっている可能性があります。
尋問質問とは「どこで、いつ、誰と、何をやっていたの?」など、すぐに知りたい情報だけを子供から得たいという気持ちの時になされる質問です。
しかし、コーチングの質問は相手から情報を素早く得るためのものではありません。
尋問質問をすれば、子供の気持ちは無視され、子供は手っ取り早く情報を引き出されるのだという気持ちになってしまうでしょう。
また、尋問質問をされた子供は、説明する機会が与えられないことで自分が尊重されていない気持ちになりますし、場合によっては、情報が自分の不利な仕方で使われるのではないかと不安になり、尋問質問に答えることはないでしょう。しぶしぶ答えたとしても、心を開くコーチング会話とは程遠い会話になってしまいます。
尋問質問の代表・「なぜ」質問
尋問質問の代表に「なぜ(Why?)」で始まる質問があります。
コーチング質問をする際、頭に普通の会話の質問イメージがあると、どうしても「早く答えを知りたい」という気持ちになって「なぜ?」「どうして?」という質問をたくさんしてしまうことがあります。
しかし、コーチング質問は答えを知るための質問ではありません。
コーチングの質問は、「相手の気持ちや、思考の過程を知るための合いの手」のようなものです。
また、コーチングの質問は相手の考えを導く助け手ともいえます。
しかし、そのような質問も、「なぜ」「どうして」ではじまり、その後に「~できない」「~やらない」などのネガティブなセンテンスと繋がると、あっという間に尋問質問になってしまいます。下の例を見てみましょう。
例:
親: なんでできないの? どうして片付けなかったの? なぜ仲良くできないの? どうしてダメなの?
子供:(無言)
※この質問では、子供は「会話をしている、質問を受けている」とは思わず「怒られている、責められている」と感じます。会話はここで止まるか、喧嘩が始まってしまうかもしれません。
「なんで~できないの?」「どうして●●なの?」が口癖になっている場合は特に気をつけ、「なぜ」「どうして」で始まる質問をしばらく控えるようにしてみてください。
質問をする時は:
「この質問は子供の気持ちを知るための質問だろうか?子供の気持ちを共感する質問だろうか?それとも自分の知りたい情報だけを得るための質問や、子供を糾弾するための質問だろうか?」
と考えてみてください。
答えのない問題を質問している場合
もう一つ避けたい「質問」に、「質問の形式を取っているが、正しい答えがない質問」というものがあります。
何度言えば分かるの?
いつになったら出来るの?
どうしていつも●●なの?
などの質問です。
「何度言えば分かるの」という質問した場合、「5回言われれば分かる」などという答えはは期待していないはずです。「何回?」と質問していながら、子供から「●回」という具体的な答えが返って来たら憤慨してしまうでしょう。
このような質問は「質問形式」をとっていますが、実は質問ではありません。
これは「反語(はんご)」といわれる言葉で、話し手がすでに意図していることをわざと疑問詞で述べる会話の仕方です。
例:
「いつまでそんなことをやってるの?」
(「何時まで」という答えを期待している質問ではなく、「早くしなさい」という意図が隠れている)
「なんでこんな子になったの?」
(具体的な理由を答えを期待しているのではなく、「わたしには責任がない」「こんな子供はいらない」などのネガティブな感情が表されている)
反語は「本当に表したいことの反対のことを述べて、皮肉として用いられる」ための用法ですから、もともと冷たく、人を傷つける力を持っています。このような「質問」はチャイルドコーチングでは使わないようにしてください。
親が質問(実は反語)という形で不満や怒りを子供にぶつけている時、子供ははっきりその質問の意図を読み取っています。つまり、「どんな答えをしても受け入れられない」質問であることがわかっているのです。
このような質問はコーチング質問でも通常の質問でもなく、怒りの言葉なのです。ですから、このような質問で会話や関係が良くなることはありません。
また、子供は親が好戦的な態度の時は同じように対応するべきだと思っていますから、子供から返ってくる反応も刺々しいものになってしまうでしょう。
もちろん、この手の質問によって子供のやる気は削がれてしまうでしょう。
- 「尋問質問」は子供の心を閉ざしてしまうので使わないようにしましょう
- 尋問タイプの質問1「なぜ+ネガティブ質問」
- 尋問タイプの質問2「答えがないタイプの質問」(反語)
