レッスン4では、チャイルドコーチングの第3ステップである「質問する」を詳しく学習していきましょう。
通常の会話での「質問」とコーチングでの「質問」は少し違います。
通常の会話での「質問」は、質問をした人が何か(情報や答え)を聞き出すために、質問者の都合で行われます。
コーチングでの「質問」はそれとは違い、質問によって相手に考えさせたり、新しい見方を提示したりするために行われます。いわば、相手のための質問です。
正しく質問された子供は、質問によって深く考慮したり、やる気を出したり、新しい答えを見つけ出します。
一方で、間違ったタイプの質問がされると子供はその質問によって憤慨したり、やる気をなくしたり、心を閉ざしてしまいます。
それではコーチングでの「質問」がどんな役割をするのか詳しくみていきましょう。
1:関心を表すために質問する(聴く、共感をするテクニックの延長)
チャイルドコーチングの「質問する」スキルは、ステップ1(聴く)とステップ2(共感する)の延長上にあるテクニックです。
子供の話が一段落ついた時点で適当な質問をすることで、「ちゃんと聞いていた」「そして内容に共感した」ことが表せます。
また、適度に質問をすることで「話に興味を持っているよ」「もっと聞きたい」というメッセージを送ることができます。
的確な質問がされれば、子供は「ちゃんと話を聞いていてくれたんだ」「理解してもらっているんだ」と、安心してもっと話したいという気持ちになり、コーチングが自然に進んでいきます。
2:思考の整理(質問を受けることによって子供の頭中が整理される)
質問を受けた子供は、その質問に効果的に答えるために話を筋立てたり、話を整理したりしなければなりません。
子供の中では明確な内容も、親の質問によってはもっと説明が必要になることもあります。話の結論が飛躍しすぎていることもあるでしょう。しかし、質問を受け、それに答えることで考えが整理されていきます。
例:友達に嫌われたかもしれない場面で
子: ●●ちゃんに嫌われたからもう幼稚園に行きたくない。
親: 幼稚園に行きたくないんだね。でも、●●ちゃんに嫌われたってどういうこと? (共感の繰り返し、興味を表す質問)
子: だって嫌われたんだもん。
親: どうして嫌われたと思ったの?(具体的な話を促す質問)
子: だって私が挨拶しても無視するんだもん。
親: 無視するんだ。いつもなのかな?(具体的な話を促す質問)
子: 昨日だけだけど。
親: 無視されたら傷ついちゃうね。(共感)
子: うん。無視っていうか、他の子と話したまま、挨拶してくれないんだもん。
親: 他の子とお話したままだったんだ。(共感のための繰り返し)お話の途中だったので、すぐに挨拶できなかったかもしれないね。●●ちゃんとは、ずっと一日中遊ばなかったの?(子供に思考させるための質問)
子: 遊んだよ。
親: その時は●●ちゃんはどんな感じだったの?(子供に思考させるための質問)
子: どんなって、普通だよ。
親: じゃあ、良かったね。明日、●●ちゃんがお友達とお話していない時挨拶してみようか?(提案の質問)
子: そうだね。
親: じゃあ、挨拶できたらお母さんに知らせてね。
子: わかった
※この会話では、「幼稚園に行きたくない」「友達に嫌われた」という飛躍した考えを、いくつかの質問によって調整しました。「幼稚園に行きたくない」から始まった会話の最後では、幼稚園に行くという約束をすることができました。
このように、自分の話をもう一度振り返ったり、聞き手にわかりやすく説明したりする過程で、子供の頭の中はだんだん整理されていきます。
親から質問を受けることによって、子供は色々なことを考えなおしていきます。そして、質問に答える過程で、自分の間違った思考に気づくチャンスに出会えるのです。
3:必要な情報や感情を聞き出すための質問
子供がまだ幼い場合や、話上手ではない場合、気持ちや情報を十分に話の中に織り込むことができないかもしれません。そんな場合は、親が優しく質問するという形で提案や選択肢を出してあげることで話を進めていきましょう。
下記の例では、いくつかの簡単な質問に答えていく中で、子供本人が言葉として見つけられなかった感情や情報などを引き出しています。
例:兄弟げんか場面で
親: 何があったの?
子: (どうして妹のおもちゃを取り上げたのか自分でも)わからない。
親: わからないんだね。(共感)
子: うん。
親: ●●ちゃんが、今おもちゃを使いたかったのかな?(感情を聞き出す質問)
子: そういうわけじゃないけど。(妹には)私のおもちゃを使わせたくないの。
親: 使わせたくないんだ。(共感)
子: うん。だってすぐ壊すんだもん。
親: 壊しちゃうんだね。例えばどんなふうに壊されちゃったの?(状況を引き出す質問)
子: うーん。壊しちゃうっていうか、壊してはいないけど、ベタベタ汚くしたりするんだよ。
(質問に応えることによって、おもちゃを壊されたわけではないと気づきます)
親: そうなんだね。(共感)。でも(妹)一緒に遊びたいみたいだから、どうやったら一緒におもちゃを使えると思う?(考えを促す質問)
子: 大切に使ってくれるんだったら一緒に使ってもいいよ。でも、私がいる時じゃないとダメだからね。
親: じゃあ、●●ちゃんが一緒に遊んであげればいいね。
子: おもちゃを汚してたらお母さんからもちゃんと注意してよ。
親: うん。そうするね。
※この会話の出だしでは、おもちゃを兄弟と共有したくない理由として、「自分の物を大切にしたい。尊重して欲しいから使わせてあげるのが不安」という気持ちを上手には説明できませんでした。
しかし、質問に答えていくことで、兄弟にいじわるをしているわけではなく、自分の物を大切に扱って欲しいという気持ちを親に伝えることができました。
最後には兄弟で一緒におもちゃを使うという課題に対して、親と子供両方の提案がなされ、同意に至ることができました。
4:コーチングの行方を正しくリードする
子供がお話に慣れていず、話があまりに脱線する場合などは元の話に戻すために質問を使うことができます。
例:途中で話題が変わってしまった場面で
子: あ、それからね、違う話だけど、
親:(話を最後まで聞いて本筋とは関係ないと判断した後)そうなんだ。さっきの話なんだけど、●●君が宿題を忘れた時、先生はなんていってたの?
子: ああ、あれね。ええと。
また、子供が1つの感情にとどまってしまう場合、質問によって視点を変えてあげることもできます。
例:話題を別の視点で見るよう誘導する場面で
子: ●●君とは絶対にもう口をきかないよ
親: そうか、とっても怒っているんだね(共感)。約束を破られたらがっかりするよね。(共感)
でも、●●君にも約束を破った理由はないのかな?(子供の視点を変える質問)
子: しらないよ。親に宿題を終わらせないと遊びに行かせないと言われたとかいってたけど。
親: そうなんだ。●●だってお父さんにそう言われたら遊びにいけないよね。
子: そうだけど。だったら先にちゃんと宿題を終わらせとけばいいんだよ。まあ、●●君には無理かもな。●●君はいつも宿題の提出が遅いんだ。
(質問により、別に視点で考えることにより「友達がわざと約束を破ったわけではないかもしれない」と、自分なりに納得することができました。)
それでは次のレッスンで具体的なコーチングの質問の方法を学習していきましょう。
- 普通の会話の質問とコーチング質問は違う
- コーチングでは相手(子供)のために質問を行う
- 質問によって視点を変えたり思考を整理させたりできる
