Lesson3-3 共感する③ー認知的共感・ミラーリング

Lesson3-2では、共感の気持ちを表情やボディランゲージで相手に伝える方法を学習しました。

今日は、相手の話の内容を確認しながら行う共感「認知的共感」を学習しましょう。

チャイルドコーチングを始めた段階では、「話に口を挟まず、最後まで聞く」「穏やかな表情で頷きながら聞く」といったスキルを実行しただけで、かなり大きな手応えが感じられるはずです。親と子供がお互いコーチング・リスニングに慣れてきたら、コーチングの第二ステージである「共感する」ステージで具体的な応答にトライしてみましょう。

認知的共感とは?

認知的共感とは、相手の話の具体的な内容に興味を示すことです。

認知的共感を表す目的はLesson3-1で学んだ共感と同じく「あなたの話をちゃんと聞いていますよ」というメッセージを子供に送ることです。

なぜ認知的共感が必要なの?

子供が一生懸命話しを組み立てたり、自分の感情や行動の理由を探ろうとしている時は、聞き手の質問に応える余裕はありませんから「温かい表情で頷きながら聞く」情動的共感が最も適しています。

しかし、子供の話が一旦落ち着いたら、子供は聞き手の反応を気にするかもしれません。

そのようなタイミングで、子供の話を確認したり言い換えて表現することで、こちらが具体的にどのように共感したのか表すことができます。

子供はそのフィードバックを聞きながら、「本当に聞いてもらえた。共感してもらえている。」と安心します。話が間違って伝わっている場合、親のフィードバックを元に訂正したり、新たに説明を加えたりしてくれるかもしれません。

自分の話の要約を聞き手の口から聞くことで、子供も自分の話の内容を見直し、少し大げさだったり、感情的だったりした場合は気持ちが冷静になることもあります。

認知的共感を表す方法

ミラーリング

「ミラーリング」とは、話の内容を「鏡」のように繰り返して共感を表す方法です。

相手の話を上手に要約したり、言葉を置き換えて的確に表現するテクニックはプロのコーチでも熟練したスキルが求められる場面です。

要約や言葉の置き換えが難しければ、初めのうちは話の内容をそのまま繰り返す「ミラーリング」を適用してみましょう。

子供の話が一旦落ち着いた段階で、今までの話の内容をそのまま繰り返してみてください。

そのまま繰り返すのは聞き手(親)にとっても話し手(子供)にとっても退屈なことのように思えるかもしれません。

しかし、話し手にとっては自分の話をもう一度聞き手から聞くことは決して退屈なことではありません。

自分の話をもう一度他の人の口から聞くことで、本当に相手が自分の話を聞いていたと確実に感じることができますし、自分の話を客観的に考えることができます。

子供の話を要約したり言い換えて表現する共感法と違い、ミラーリングには技術が必要なく、コーチングを行っているという実感が持てないかもしれませんが、Lesson3-1で紹介した心理学者カール・ロジャーズは、「(相談者)本人が自分の言葉によって話したいように話す時に(カウンセリングの)効果が上がる」と報告しています。

そして「相談者(話し手)の言葉をそのまま繰り返し、相談者の言葉を出来るだけ正確に返すことが正しい共感を示すことになる」としています。

ですから、ミラーリングは最も効果的で間違いのない「共感方法」であるといえます。

会話例1 聞き手に共感がなく聴く姿勢がない場合の例

: 「どうしてこんなに遅く帰ってきたの?」

: 「●●ちゃんと待ち合わせしてたんだけど、来ないから待ってたら遅くなった」

: 「え?どういうこと?どうして来ないの?確認したの?電話してみた?」

: 「いいよ。知らない。放っておいてよ」

3-3a

会話例2: 聞き手がミラーリングを使った共感を示した場合の例

: 「どうしてこんなに遅く帰ってきたの?」

: 「●●ちゃんと待ち合わせしてたんだけど、来ないから待ってたら遅くなった」

: 「●●ちゃんが来なかったんだ」

: 「うん。」

: 「遅くまで待ってたんだね」

: 「うん。ひどいよね。ちゃんと約束したのに!私●●ちゃんに嫌われたのかな」

: 「約束したのにひどいね。●●ちゃんに嫌われたと思うんだね」

: 「うん。まあ、分からないけど。私もしっかり確認してなかったから●●ちゃんに約束が伝わってなかったかもしれない。明日学校で会うからいいや。帰りの連絡しないでごめんね。」

: 「ちょっと心配しちゃったから今度は連絡してよ。」

: 「わかった。そうする。」

3-3b

会話1では、子供の具体的な話が始まる前に親の尋問が始まってしまいました。子供は遅くなったことを詫たり説明したりする前に「友達に嫌われたのかもしれない」という心配で不安になっています。この会話の流れでは子供は親の尋問に心を閉ざしてしまい、本当の不安な気持ちを話すことができませんでした。

親の側の「遅く帰らないように」というメッセージもきちんと伝わっていません。

会話2では、まず親が子供の言い分を聞き、ミラーリングで子供の言葉を繰り返して「ちゃんと聞いている」ことをアピールしています。

子供は親の「共感」のサインに勇気付けられて、「もしかしたら友達に嫌われたのかも」という自分の不安な気持ちに気づきます。

「ひどい」「嫌われた」という自分の感情を親からのミラーリングで聞き直し、早急に結論づけた自分を客観的に見ます。そして「ちゃんと約束した」と思っていたけれど、よく考えて見れば曖昧な約束だったと冷静に分析し、問題を解決しました。

子供は問題を解決し、気持ちが落ち着いたので「連絡なしに遅く帰ったこと」の親の言い分を聞く余裕ができ、親との約束も素直にできました。

  • 認知的共感とは相手の話の具体的な内容に興味を示すこと
  • 認知的共感はまず「ミラーリング」で示せる
  • ミラーリングとは、相手の言葉をそのまま繰り返すこと