このレッスンでは、現代のコーチングで主流と言われているコーチングの種類をいくつか学習しましょう。
この章の細かい部分を覚えたりする必要は全くありませんが、実践前にコーチングの全体像を大まかにつかんでおくと、理解度や吸収度(記憶度)が大きく違いますので、ぜひ、がんばって目を通してみてください。
また、様々なタイプのコーチングメソッドを知ることで、難しい事例においても色々なコーチング法を組み合わせ、コーチングを独自にアレンジすることができるようにもなります。
子育てコーチングに関係する主要な3つのコーチング流派
それでは、子育てコーチングで使われるコーチングの基盤になった3つの流派を紹介しましょう。
コーアクティブ・コーチング (Coactive Coaching)
コーアクティブ・コーチング法は1992年にヘンリー・キムジーハウスとキャレン ・キムジーハウス夫妻、そしてローラ・ウイットワースの3人によって創設された CTIというコ ーチング・トレーニング組織の中で開発されました。
コーアクティブ(coactive)という言葉には、「一緒に(co)+行動する(action) する」という意味があります。
このコーチング法が開発されるまでは、コーチング技術は「影響力のあるコー チ になるにはどうしたらいいか」など、コーチ側に焦点が当てられていました。
しかし、コーアクティブ・コーチング法は、「一緒に行動するコーチング 」という名の通り、コーチングを受ける側に立って開発されたコーチング・メソッドです。
このコーチング・メソッドで、「コーチングとは、コーチの力量で相手を導いてあげる技ではなく、コーチされる側の潜在能力や良い特質を引き出す技である」と初めて定義されるようになりました。
現在、日本で子育てに利用されているコーチング方法はこの「コーアクティブ・ コーチング」をモデルにしたものが主流です。
コーアクティブ・コーチングの内容
コーアクティブ・コーチングでは以下の4つの方法でコーチングを進めます。
- 傾聴する-子供の話をしっかり聴く
- 承認する-子供の気持ちを受け止める (例:「とても辛かったんだね」)
- 好奇心を持つ-質問をする (例:「どうしてそのように思ったの?」など)
- 行動させる-問題解決のために何ができるかを相手に結論させる
GROWモデル
「GROWモデルコーチング」はグラハム・アレクサンダーによって1980年代に開 発され、その後現在のビジネス・コーチングの基本形態になりました。
「GROWモデル・コーチング」は行動を促すために効果的なメソッドといわれています。
このコーチングは、コーチング内容(Goal,Reality,Option,Will)の頭文字をつなげてGROWモデル と呼ばれています。
一緒に問題を解決する「コーアクティブ・コーチング」とくらべて、内容が少し複雑ですので、子供がまだ幼く一人では問題解決が難しいような場面で、大人が主体になって流れを作りたい場合に利用できるでしょう。
GROWモデルでは、以下の順番でコーチングを行います。
- ゴール(Goal): 話し合いの目標目的を設定する 例)間食をしすぎているのでやめさせたい
- 今の現状(Reality): 現状ではなにが起こっているかを話し合う 例)子供たちが食べたいときに好きなだけお菓子を食べている
- オプション(Option): 行動案を一緒に考える。 例)子供との話し合いの中で、子供たちから次のような選択案が出た。「お手伝いをしたらお菓子を食べる、3時になったら食べる、決まった量を自 分で分配して食べる」
- 行動(Will): 話し合いで出たどの選択肢を取るか、またいつそれを 行動にうつすか 例)決まった量を自分で調整して食べる。明日から実行する。
インナーゲーム
インナーゲーム(inner game)とは、W.ティモシー・ガルウェイがテニスのレッスンを通して考案してもので、1974年に著作 “The Inner Game of Tennis“(『新インナーゲーム』)にて発表した考え方です。このインナーゲームの方法論は、スポーツとビジネスの境界線を超えた最初のコーチングモデルのひとつでもあり、現在様々な流派があるコーチングの源流の一つとも言われています。
インナーゲームが重要だったのは、「外なる敵」と「内なる敵」の両方を扱った点です。例えばスポーツの場合、それまでは「外なる敵」であるライバルについてはあらゆる情報に精通し対策も講じていましたが、自分たちの内面や心の弱点などに関して注意を向けるという視点はありませんでした。ガルウェイは、心の中の「インナーゲーム」に勝つことが、アウターゲーム(実際の勝負)に勝つための近道であると説きます。
当初はテニス競技において発案されたこのインナーゲームの方法論でしたが、現在ではスキーやゴルフなど様々なスポーツの上達にも適用可能であるとされています。また音楽や楽器の演奏や、会社での仕事、そして子育てや親子の関わりにも有効であるとされています。
その他のコーチング
これから紹介する2つのコーチング・メソッドは、先ほど紹介した3大コーチング以外でよく知られているコーチング方法です。
NLPコーチング
NLP (Neuro-Linguistic Programming: ”神経言語プログラミング” の略)
1970年代に米国カリフォルニアのサンタクルーズ大学で開発されたコーチングスキルで、実践的な心理学が応用されています。
NLPコーチングスキルは、日本ではその応用技術が「メンタリズム」などと呼ばれることもあり、 TV等でその内容を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
NLPコーチングは、「いつも使用している言葉や視点を変えることによって、新たに神経(つまり精神)をプログラミングする」というテクニックです。使い方によってはポジティブ、ネガティブに関わらず、どんな気持ちの相手にも対応することができます。
このメソッドは、相談相手の言葉を繰り返す(バック・トラッキング)ことで相手に同意や承認を伝え 、話をひきだしていく方法でよく知られています。
コーチングの技術としては高度ですが、コーチングにおいて「質問」に使用する言葉を選ぶことは重要なポイントとなりますので、部分的に使っていきましょう。
ポジティブ心理コーチング Authentic Happiness Coaching
今までご紹介した4つのコーチング・メソッドは、「親の言うことをきかない」、「兄弟げんかばかりする」等の具体的な問題に即時に対処するのに使えるメソッドです。
一方、ポジティブ心理コーチングには即効性はありませんが、子供の「悲観的、引っ込み思案、すぐ傷ついてしまう、すぐ諦めてしまう」などの性格的問題を対処でき、子供の鬱対策などより難しい問題解決に利用できるメソッドです。
ポジティブ心理コーチングは”将来がんばりのきく子になって欲しい”、”幸せな人生を送って欲しい”等、 親の抽象的な願いを長期的に実現してゆくために使えるコーチングメソッドです。
このチャイルドコーチング・マイスターでは以上5つのコーチング・メソッドを織り交ぜ、子育てに実用できるコーチングを学習していきます。
- 一緒に問題解決していくコーアクティブコーチング
- 目標達成に重きを置いたGROWモデルコーチング
- 性格的問題を対処するポジティブ心理コーチング
