レッスン1-1では大まかなコーチングの歴史背景を学習しました。
前章でご紹介したように、コーチングは古代から現代まで長い時間を経て、主な活躍のステージも変えつつ進化してきたものです。
ですから一口に「コーチング」といっても、色々な内容や意味合いがあります。
このレッスンでは、現代で使われているコーチングとはなにか?その定義を理解していきましょう。
コーチングを行っている最中に「今、自分の行っているコーチングはどのコーチングなのかな?」と考えることにより、コーチングが横道に反れてしまうことを避けられます。
現代コーチングの定義
コーチングとは、コーチングを受ける人が自分で答えを導きだす技術です。
コーチが相手に指示を出して、それに従わせる技術ではありません。
ですから、「コーチング」は、コーチが相手を思うように操作する「コントローリング」術ではありません。
「コーチング」は主に話し合いという形式で行われ、その話し合いは大まかに下記の3つの流れで進行されます。
- 相手の主張をよく聴く
- 聞き手が真摯な質問をする
- 相手に解決案を提案させる
この3つの流れで行われる話し合いは、どこで、どんな目的で行われていても、全て「コーチング」であると言ってよいでしょう。
現在この3つのポイントを使った話し合いは、ビジネスの場での人材育成や、モチベーションアップのために行われていたり、スポーツの試合で勝つために使われています。
そして、もちろん家庭において子育てのためにも活用されています。
適用されているジャンルは違っていても、全ての「コーチング」の基本は「聴く、質問する、相手に考えさせる」の3つです。
身の回りでこの3つのポイントで構成される話し合いを探してみると、色々な場面で「コーチング」技術が利用されていることがわかります。
例えば「占い」です。
占い師はまず、クライアントの話を「よく聴き」ます。
そして、占星したり、カードを用いたりしながらクライアントに効果的な「質問」していきます。
クライアントはその質問に答えることによって、最後には自分で問題を終結させていきます。
こんなところにも「コーチング」の技術が使われていたんですね。
コーチングとティーチングの違い
「コーチング」と「ティーチング」。
似たような言葉ですが、どのように違うのでしょうか?
ティーチングとは「教えること」、指示や助言によって相手に答えを与えることです。
子育には、例えば「道路を渡るときは大人の手をつないで渡りましょう」等、 守らなければならない決まりごとを子供に伝え、すぐその通りに行動してもらわなければいけない状況がたくさんあります。
すぐに従って欲しい場面では、「コーチング」ではなく、行動の仕方を具体的に指示してあげる「ティーチング」が必要です。
しかし、子供が「道路で手をつなぎたくない」と、指示に従ってくれない場合、後に時間の取れる場所で、「なぜ手をつなぎたくないのか」「つながないとどんな事が起こるのか」「手をつなぐ他に道路を安全に渡る方法はあるか」など子供と話し合い、子供に考えてもらう必要があります。
これが「コーチング」です。
それぞれの技術に適した状況がありますので、状況に合わせてどちらを使うか判断していきましょう。
レッスンを進めていくに連れて、どの場面でティーチングを使うべきか、またはコーチングを使うべきか分かるようになります。
子供が小さい時期には、本人に知識や経験が少ないため、大人が何かを教えてあげる「ティーチング」の出番が必然的に多いかもしれません。
一方、コーチングは自我が芽生えてくる2歳くらいから利用できるといわれています。
「ティーチング」は教える側が教えられる側よりも知識を持っていることが必要です。
しかし、「コーチング」は本人が答えを見つけ出すのをサポートす る技術ですので、子供が大きくなり、親の守備範囲を超える分野で活躍するようになっても使い続けられるのです。
コーチングの技術を身につければ、”子供が大きくなったら何もサポートしてあげられなくなるのでは?”と心配する必要はありません。
コーチングの形態
コーチングの形態には2つ種類があります。
- 専門家モデル
- コンサルテーションモデル
ひとつめの「専門家モデル」は、建築や医療などの分野で使われています。専門的な知識を持った人物が、専門分野においてクライアント(相談する人)の話を聴き、問題解決に導いていくタイプのコーチングです。
例)
住みやすい家を建てたい →建築家に相談する
最近視力が悪くなった →眼科に相談する
専門家モデルのコーチングでは、コーチは相談者が持っていない専門知識を持っていますので、時にはコーチ役の人が相談者に代わって解決案を提案することもあります。
しかし、その場合もあくまで相談者の意向にそって提案され、その提案を受け入れるかどうかは相談者が決定できます。
ふたつめは「コンサルテーション※1(相談)モデル」です。
このタイプのコーチングは「相談の答えや成長に必要な能力は全て相談相手がすでに持っている。コーチはそれを引き出す手助けをする」と定義されます。
子育てコーチングでは主にこの「コンサルテーションモデル」のコーチングを使い ます。
ですから、コーチングをするために、専門知識や相談事への予備知識などを持っている必要ありません。
(※1: consultation 話し合い、相談する、という意味)
コーチングとカウンセリングの違い
「カウンセリング」とは、もともとは精神医学用語で、「専門家が相談者に助言や指導を与えること」という意味がありました。
この定義から考えると、「コーチング」と「カウンセリング」が違うものであることに気づかれるでしょう。
しかし、現代では「カウンセリング」という言葉が精神医学用語としてではなく、日常的使われるようになり、その意味も「専門家の指導」ではなく「相談する、話をする」という意味で使われることが多くなりました。
また、もともと「カウンセリング」技術も、相談者の話を聴き、質問を利用して問題を特定するという「コーチング」の流れと似たところがあるため、「コーチング」と「カウンセリング」の区別がつきにくく、現在では2つの技術はほとんど同じものと考えられています。
子育てコーチングでは親が絶対的な答えを知っている場合もありますので、子供の話を傾聴しつつ、最終的には親が「人生の専門家」として子供に助言を与える「カウンセリング」形式で問題を解決するべき時もあります。
まさに子育てコーチングは、「コーチング術」と「ティーチング」、そして「カウンセリング術」を場面によって使い分けるコーチングなのです。
- コーチングはコーチングを受ける人が自分で答えを導く技術
- コーチングは「話し合い形式」で行われる
- チャイルドコーチングはカウンセリング、ティーチング、コーチングの組み合わせ
