コーチングの語源と歴史

最近、子育てに「コーチング」という言葉がよく使われるようになりましたが、「コーチング（coaching）」とはなんでしょうか？

このレッスンでは、コーチングをより良く理解するために、コーチングの生まれた背景や歴史を見てみましょう。

「コーチング」の語源

「コーチ（coach）」という単語は、もともと”馬車や列車の車両”という意味を持っています。

人や物を運ぶというイメージから、”今いる場所（状態）から別な場所（目的や目標地点）へ導くもの”の意味で使われるようになり、現在ではスポーツなどで選手を勝利に導く指導員をさす言葉になりました。

「コーチング」とは「コーチ（指導員）」が動詞に発展した言葉で、「指導する」という意味です。

コーチングとは二人の人間が対話を行い、コーチされる側が自分から答えや課題を見つけるよう導かれる技術です。

「チャイルドコーチング」は、コーチングのメソッドを子育て用に応用させたコーチングの種類です。

コーチングの歴史は西暦前5世紀のソクラテスの時代までさかのぼります。

ソクラテスは問題の答えを弟子たちに与える代わりに、質問を投げかけ、対話の中で弟子たちが自ら答えを導くようサポートしました。

これは「ソクラテス的対話」、または「ソクラテス的問答法」と呼ばれています。

このメソッドは現代ではアドラー（心理学者）による精神療法などで精神療法向けに改変された他、教育界においては法学校で事件の内容を質問により整理し、結論を導き出していくテクニックとして利用されるようになりました。

20世紀になると、コーチング技術はスポーツ界にて、選手の意欲や能力を引き出す精神面でのサポートとして使われるようになりました。

この精神面でのサポートをするトレーナーは、「コーチ」と呼ばれるようになりました。

スポーツ界にコーチングを初めて紹介した人としてティモシー・ガルウェイという人が有名です。

彼は1972年に「インナーゲーム」という本を出版し、テニスの試合にコーチングを適用し、スポーツ界におけるコーチという形態を確立しました。

1980年代になると、アメリカの金融界などのビジネス社会でコーチングが利用されるようになりました。

当時金融会社のアドバイザーだったトマス・レナードは、彼に金融アドバイスを求めてくる顧客が、実は「金融のアドバイスではなく、彼らの財政問題を作り出している精神的問題の解決を求めていること」に気づきました。

顧客の財政問題は、彼らが抱えている精神的問題から引き起こされた結果の一部に過ぎないと知ったトマス・レナードは、顧客が自分で問題を突き止め、解決できるようなプログラムを開発しました。

トマスはそのプログラムで、それまで確立されてきたコーチング技術と心理学を組み合わせ、現在用いられているコーチングのモデルを形成し始めたといわれています。

1990年代になると欧米のビジネス界では社内でのコーチングが普及し、「社員の幸福感が高いほど、そして社員が成長すればするほど仕事もいっそう質が高まり、生産率が向上する」という相互成長の風潮が定着しました。

同じく1980年代、コーチングは「ベスト・キッド」などの人気映画の中で紹介されました。映画「ベスト・キッド」では、空手の達人「ミヤギ」が主人公のコーチとなりますが、彼は決して主人公の質問に直接答えを与えません。主人公は自分で答えを考えださなければならないのです。

映画「ベスト・キッド」では主人公が根本的な問題を自ら解決するよう、コーチがたくみに導くシーンで「コーチング」が使われています。

このように「コーチング」は、哲学、心理学、ビジネス界など限定された世界を飛び出し、一般の人々にも知られるようになりました。

また、この時期から、それまで限られた人しか利用できなかった自己啓発プログラムの益を「自問自答する」というセルフ・コーチングによって、誰でも得られるようになりました。コーチングの普及により、「より高い個人」に関心が集まるようになったのです。

2000年に入るとコーチングは欧米で社会的地位を確立し、その技術は大学などの講座で教えられるようになり、個人レベルで活用されつつあります。

このように、コーチングは非常に効果的な目標達成のための意識改革ツールとして、世界で脚光を浴びてきました。

しかし、日本においては、コーチングの紹介からまだ20年ほどしか経っていないこともあり、まだまだ新しい技術であることは否めません。この教材からいち早くコーチング技術を習得し、子育ての中で活用してゆきましょう！